結論を先にいうと、オーレアは自然発生種、ゴールデンは園芸品種です。
ただ、植物学的にも明確に分類できる特徴の違いが無いため、アロイド(サトイモ科)専門学者の研究でもよく分かっていません。
大前提!オーレアもゴールデンポトスも原種ではない
まず、オーレアとゴールデンの違いの前に、大前提としてどちらも原種ではないことを解説します。
原種は通称“アオバ”と呼ばれた、東南アジアに自生している葉が緑色一色のエピプレムナム・オーレウム・ヴィデンス(Epipremnum aureum cv.“Virens”)=エピプレムナム・ムーレンセ(Epipremnum mooreense)といわれています。
同様のことが、イギリスのアロイド学者ピーター・C・ボイスが2004年に発表した論文「栽培されるエピプレムナムの概説(A Review of Epipremnum (Araceae) in Cultivation」にも紹介されています。
>>ポトスの原産地はソロモン諸島ではなかった!【最新研究結果】
通称“アオバ”、緑一色のエピプレムナム・オーレウム・ヴィデンス(Epipremnum aureum cv.“Virens”)、かつては園芸植物として流通していましたが、現在は消滅しています。
(ちなみにパーフェクトグリーンとは全く別物です)
で、アオバ(エピプレムナム・オーレウム・ヴィデンス)から突然変異によって黄色い斑が出現したものが、エピプレムナム・オーレウム(=オーレア)という品種です。
この根拠は1880年にリンデンとアンドレが世界で初めて“ポトス”を紹介した『L’ILLUSTRATION HORTICOLE』Vol.27のP69(ミズーリ植物園所蔵)に、「1879年にリンデンがソロモン諸島から取り入れた」との記載に起因します。
なぜならこの時点では、まだ世間に知られていない為、黄斑の人工的な選抜による園芸品種の作出が行われていたとは考えにくいからです。
そして、のちにオーレアのうち黄色い斑が多いものを人工的に選抜した園芸品種がゴールデンと言われています。
19世紀には園芸品種(=観賞用として選抜されたもの)として誕生していたようです。
アオバ エピプレムナム・オーレウム・ヴィデンス(Epipremnum aureum cv.“Virens”)
↓
ポトスオーレア・・・Epipremnum aureum
↓
ゴールデンポトス・・・Epipremnum aureum Golden
ただし、突然変異によって黄色い斑が現れたもの=オーレア=ゴールデンと、どちらも一緒である説があります。
なぜならゴールデンの具体的な作出年などが判明していないため、単なる選抜過程の呼称の違いに過ぎないと考えられるからです。
オーレアとゴールデンポトスの違い
ヴィデンス | 緑一色の原種 |
オーレア | 黄斑の自然発生種 |
ゴールデン | 人工的に選抜した園芸品種 |
オーレアは自然発生種、ゴールデンは園芸品種という違いの他に、
イギリスのアロイド学者ピーター・C・ボイスが2004年に発表した論文「栽培されるエピプレムナムの概説(A Review of Epipremnum (Araceae) in Cultivation」にそれぞれの違いが記載されています。
しかし、その違いについては学者であっても不明なことが読み取れます。
以下はその内容を意訳したものです。
ポトスオーレア
典型的な他の植物と同様に、現在栽培されている❛オーレウム❜(=オーレア)は植物学者リンデンが最初に発見したポトスと同種かどうかは不明です。
若い葉には 濃い緑色の上にゴールデンイエローのギザギザした大きな斑が入ります。
生長すると、黄色の葉の模様の面積が増え、成熟した個体では葉がほとんど黄色になるまでになることも少なくありません。
茎は緑色の上に黄色のマーブリングがあり、多彩である。
ゴールデンポトス
葉や茎が全体的にはっきりとした黄金色になる品種。成木の「ゴールデンポトス」は栽培では珍しい。
登録名が「ポトス」であることは残念なことかもしれない。
ポトス(Pothos)とパトス(Pathos=物悲しい)は言語的に似ているから、どっちがどうだか“曖昧”である。
それと同じようにゴールデンポトスに関する詳細も“曖昧”である
“成木の「ゴールデンポトス」は栽培では珍しい”という一文から分かるように、裏を返せば自然界ではあまり見られないということ。
つまりゴールデンポトスは、大前提として園芸品種であると強く認識されていることが分かります。
オーレアとゴールデンを見分けるのは不可能
ポトスが日本に入ってきたのは明治時代中期ですが、その頃には既に海外で品種選抜がされていたため、
当時日本にあったポトスがオーレアなのかゴールデンなのか不明です。
よく、オーレアとゴールデンの違いとして黄斑の量、面積が挙げられます。
確かにオーレアより黄斑が多いものを選抜したのがゴールデンですが、ご存知の通り、日陰におけば斑は消えますし、量も減ります(下写真ゴールデンポトス)
そのため、現在販売されているポトスの黄斑の量でオーレアかゴールデンを判断するのは難しいです。
事実、“オーレア”という名称で販売している業者に質問したことがありますが、業者自身2つの違いを理解していませんでした。
市場に流通しているのはほぼゴールデン
これは私の個人的な意見ですが、現在市場に流通している最もポピュラーな緑葉に黄色い斑が入る“ポトス”は、ほぼゴールデンだと思います。
愛知県の観葉植物生産者である大十園さんのホームページによれば、商業生産の黎明期である昭和30年代に生産を始めていた品種一覧に“斑入りポトス(ゴールデン)”と記載されています。
今でこそ原点回帰を望み全く斑が入らない緑一色の“パーフェクトグリーン”も誕生していますが、日本では長きにわたりゴールデンポトスが多く生産されてきました。
なぜかというと、斑入り植物は商業的価値が高いからです。
一般的にどの植物でも“斑入り”には価値があり、現在ではゴールデン以上に黄斑や白斑が入る“ハッピーデー”や“シエスタ”などの新しい品種も誕生しています。
このことからも分かるように、黄斑の少ないオーレアとその後に選抜を繰り返して誕生したとされるゴールデン、どちらの生産が増えるかといえば、ゴールデンと考えるのが自然です。
ですので、現在市場に流通しているのは、ほぼゴールデンだと私は思います。