皆さん、本物のポトスを見たことがありますでしょうか?
ポトスはポトスという名前にもかかわらず、ポトス属の植物ではありません。
ここでは“ポトスの原種!本物のポトス属スカンデンスとシネンシス”についてご紹介します。
“ポトスの原種”の定義
読み進める前に、“ポトスの原種”について定義しておく必要があります。
というのも、現在私たちが通称“ポトス”と呼んでいる植物はハブカズラ(Epipremnum)属であり、本物のポトスであるユズノハカズラ(Pothos)属の植物とは別物です。
すると、“ポトスの原種”といっても「本物のポトス属の種」自体を指すのか、それとも「通称“ポトス”の原種」を指すのかわらかなくなります。
“ポトスの原種” | 属名 |
本物のポトス属の種 | Pothos(ユズノハカズラ)属 |
通称“ポトス”の原種 | Epipremnum(ハブカズラ)属の原種 |
この記事では“ポトスの原種”=本物のPothos(ユズノハカズラ)属のポトスと定義します。
ポトス属の特徴
分類 | サトイモ科ポトス属ツル性多年草 |
和名 | ユズノハカズラ属 |
漢字 | 柚子之葉葛 |
和名由来 | 葉の形や色、質感が硬くユズの葉に似る |
生態 | 鬱蒼とした森や湿った山の谷に自生、樹木にや岩に着生し登攀(とうはん)や下垂 |
翼と爪がある
ポトス属に特徴的なのは、翼と爪があることです。
通常の植物の葉と異なり、葉が2つに分かれています。
「爪」と呼ばれる根元にある分岐した小さい部分と葉身(大きい葉の部分)がつながっている様子が「翼」のように見えることからこう表現されます。
この「翼」はポトス属の語源の由来にもなっています。
ポトス属の種
ポトス属の種は判明しているだけで55種あるのですが、園芸植物のように品種改良されていないため、詳細はあまり知られていません。
その中でも比較的知られている種を紹介します。
- ポトス・スカンデンス Pothos scandens
- ポトス・シネンシス Pothos chinensis
ポトス・スカンデンス Pothos scandens
サトイモ科ユズノハカズラ属スカンデンス種
特徴
- 葉の質感は革質
- イタリアンルスカスに似ている
- 成長がとても遅い
ポトス・スカンデンス(Pothos scandens)はPothos属最古の種で、新種や新属が発見された際、分類するための判断基準種にされています。
つまり、ポトス属は判明しているだけで55種あるわけですが、その中の「見本」のようなものです。
ポトス・スカンデンス(Pothos scandens)は、スウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネ(Carl von Linné)によって、1753年『Species Plantarum』第2巻P968に記載されました。
たった3行しかPOTHOSについて書かれていませんが、
そこには「生息地はセイロン(現・スリランカ)」とあります。
こちらは私が栽培しているボルネオ島(=カリマンタン島)産のポトス・スカンデンスです。
ボルネオ島(=カリマンタン島)はインドネシア、マレーシア、ブルネイの3か国の領土に属しており、
まだまだ未知の熱帯植物の宝庫です。
マレーシアに属するサラワク州やサバ州はパルダリウムをされる方にはお馴染みの場所ですね。
分布域
- バングラデシュ
- ブルネイ
- カンボジア
- 中国雲南省
- 小諸
- インド(アンダマン諸島及びニコバル諸島含む)
- インドネシア(ジャワ、カリマンタン、マルク、ヌサテンガラ、スマトラ)
- ラオス
- マダガスカル
- マレーシア
- ミャンマー
- フィリピン
- セイシェル
- スリランカ
- タイ
- ベトナム
特徴ですが、ポトス属特有の翼、爪を備えており、葉はとても硬いです。
葉がユズの葉に似ていることからユズノハカズラといわれますが、
こちらのポトス・スカンデンスはどちらかというと、フラワーアレンジメントや花束などで使われるイタリアンルスカスに似ています。
葉のサイズや質感だけでなく、ポトス・スカンデンスは赤い実、イタリアンルスカスはオレンジ色の実を付けるところも共通点があります。
そして成長がめちゃくちゃ遅いです。
ツルが伸びるのも非常にスローペース
新葉が出かけていますが、針のように細いです。
私たちが良く知っている通称“ポトス”(Epipremnum aureum)は、成長速度が早いですが、本物のポトス属の種は正反対です。
ポトス・シネンシス Pothos chinensis
サトイモ科ユズノハカズラ属シネンシス種
こちらも“ポトス”の原種として紹介されるPothos属のうちの1種です。
特徴
- 1948年に紹介される
- 中国に多く生息
- 葉は大から小まで様々
ポトス・シネンシス(Pothos chinensis)は1948年、ハーバード大学のアーノルド樹木園が発行した植物学雑誌『Journal of the Arnold Arboretum』で紹介されました。
アメリカの博物学者コンスタンティン・サミュエル・ラフィネスク(Constantine Samuel Rafinesque)によって“Tapanava chinensis Raf”として紹介され、Pothos seemanni Schottなど変遷の後、Pothos chinensisに落ち着きました。
「chinensis」の読み方について、“シネンシス”もしくは“キネンシス”と読みますが、これは
生息域が中国内に多かったことから、China(中国)+ensis(ラテン語で~に属する)が元になっており、読み方はどちらでも構いません。
学名に“シネンシス”や“キネンシス”とあった場合「中国原産」であることが多いです。
ちなみにロサ・キネンシス・ヴィリディフローラ(Rosa chinensis viridiflora)という緑色のバラは中国原産です。
分布域
- 中国(広東、広西、貴州、海南、湖北、湖南、四川、雲南)
- チベット
- 台湾
- 日本(北大東島、南大東島、琉球列島)
- ラオス
- バングラデシュ
- ミャンマー
- インド
- ネパール
- タイ
- ベトナム
- カンボジア
基本的に特徴はポトス・スカンデンスと変わりませんが、葉が小さいものから大きいものまであること、また漢方薬として使用されることがあります。