ポトスの原産地がソロモン諸島じゃないって本当ですか!?
こんなお悩みを解決します。
本記事の内容
- ポトスが帰化・野生化した事例
- 原産地はモーレア島
- 真実が判明した理由
本記事の信頼性
- ポトス50種以上の栽培歴・コレクター
- グリーンアドバイザー
(公益社団法人日本家庭園芸普及協会) - フラワーショップ経営
本記事を書いている私はポトス50種類以上の栽培歴を持つポトスマニアです。
ポトスの原産地はどこですか?
と尋ねられた場合、観葉植物が好きな方であれば迷わず“ソロモン諸島”と答えると思います。
しかし、最新の研究結果では間違いであることが分かりました。
この記事では
“ソロモン諸島じゃない!真のポトスの原産地”についてご紹介します。
驚愕!原産地はソロモン諸島ではない
ネット、書籍ではいまだに「ポトスの原産地=ソロモン諸島」だと記されています。
観葉植物に詳しい人でもそれは常識になっています。
しかし、実はソロモン諸島はポトスが一番最初に自生していた場所ではなく、あくまでのちに帰化、野生化した熱帯地域の1つに過ぎません。
ポトスが帰化、野生化した地域例
以下はポトスがもともと無かったのに、何らかの形で持ち込まれ山や森で自然に生えてしまっている地域例です。
- バングラデシュ
- インド
- ミャンマー
- タイ
- ベトナム
- 中国(海南島・香港島)
- 台湾
- 日本(琉球諸島・小笠原諸島)
- マレーシア(マレー半島、サバ州、サラワク州)
- シンガポール
- インドネシア(ジャワ島、モルッカ諸島、ヌサトゥンガラ州、スラウェシ島、スマトラ島)
- フィリピン
- ソロモン諸島
- バヌアツ
- ニューカレドニア
- ニューギニア
- パラオ
- フィジー
- トンガ
- クック諸島
- サモア
- オーストラリア(クイーンズランド州)
- メラネシア
- マーシャル諸島
- ハワイ
- コスタリカ
- バミューダ諸島
- 西インド諸島
- ブラジル
- エクアドル
- アフリカ
- セーシェル
原産地はフランス領ポリネシア ソシエテ諸島のモーレア島
原産地(原生地)・・・最初に生えていた場所
ポトス(Epipremnum aureum)の原産地はフランス領ポリネシアのソシエテ諸島にあるモーレア島です。
東京から約8,800㎞、南太平洋にあるフランス領ポリネシアにはリゾート地で知られるタヒチ島など大小118の島々があります。
ポトスはその中の1つであるモーレア島の固有種でした。
モーレア島とソロモン諸島は5,458 kmも離れている
以下はポトスの原産地であるソシエテ諸島にあるモーレア島とソロモン諸島の位置関係です。
モーレア島からソロモン諸島まで5,458 kmも離れています。
飛行機を3か所乗り継いで4時間ほどかかります。
ちなみに東京からソロモン諸島(ホニアラ)まで5431㎞です。
5000㎞といってもあまりピンと来ないかもしれませんが、だいたい東京からマレーシアまで5320㎞。
めちゃくちゃ遠いことがわかると思います。
モーレア島にしかなかったものが、船や人によってソロモン諸島をはじめ世界の熱帯地域に渡り、帰化、野生化して現在に至っています。
なぜ⁉ポトスの本当の原産地が判明した理由
2004年、イギリスの植物学者ピーター・チャールズ・ボイスが“ポトス”(学名 Epipremnum aureum)の起源はフランス領ポリネシア ソシエテ諸島のモーレア島にあることを立証したからです。
ピーター・C・ボイスはアロイド(サトイモ科)の研究者であり、国際アロイド学会誌『アロイデアナ』にて、論文「栽培されるエピプレムナムの概説(A Review of Epipremnum (Araceae) in Cultivation」を2004年に発表しました。
その中で“ポトス”(学名 Epipremnum aureum)の起源について次のように説明しています。
ポトス・アウレウス(Pothos aureus)についての記述によると、起源となった植物はソロモン諸島からリンデンのナーセリーに来たと記載されているが、これには確証がない。
確かにEpipremnum aureum(エピプレムナム・アウレウム)に相当する植物がソロモン諸島で野生植物として採集されたことは、私の知る限り一度もない。
しかし、最近モーレア島(フランス領ポリネシア ソシエテ諸島)の自然林から採集されたナドーのEpipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)の標本を調べたところ、Epipremnum aureum(エピプレムナム・アウレウム)と同一であることが判明し、Epipremnum aureumの野生の起源が解明されました。
Epipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)の標本は斑入りではなく、19世紀に栽培導入された黄金色の斑入り種は園芸用に選抜育種された可能性が高いと思われます。
このような選抜はクロトンやポリシャスなどでも一般的に行われていた。
分かりにくいので1つずつ詳しく解説します。
ポトス・アウレウス(Pothos aureus)についての記述によると、起源となった植物はソロモン諸島からリンデンのナーセリーに来たと記載されているが、これには確証がない。
この論文を書いたピーター・C・ボイスは“ポトス・アウレウス(Pothos aureus)”と言っていますが、根拠となる実際の資料には「POTHOS AUREA」と書かれています。
「POTHOS AUREA」は植物学者リンデンとアンドレが1880年に初めて世の中に私たちがよく知っている“ポトス”(Epipremnum aureum(エピプレムナム・アウレウム)という植物を発表したときに名付けた学名です。
リンデンとは当時のベルギーの植物学者ジャン・ジュール・ランダン(Jean Jules Linden)のことで、ブラジルなどに動植物の採集をしに行った人。現在でいうプラントハンター兼学者みたいな人です。
アンドレとは当時のフランスの造園家エドゥアール・フランソワ・アンドレ(Édouard François André)のことで、ヨーロッパの数々の公園設計を手掛けたランドスケープデザイナー。植物の導入にも携わりました。
で、リンデンがポトス・アウレアをソロモン諸島から自分のナーセリー(=苗を栽培する所)に持ち帰ったという記録があるんですが、確証がないんです。
「この目新しさは特に枝分かれした匍匐する、登る茎の豊富さと、非常に不均一であると同時に黄色い斑入りの葉が注目に値する。温室の岩を飾るための貴重な植物である。リンデン氏が1879年にソロモン諸島から取り入れた。ドラセナとクロトンと同様に扱えるため大量に導入した。」
現在も尚、「ポトスの原産地=ソロモン諸島」と間違った情報が定着している根拠はこちら
>>ポトスの学名はなぜPothos属じゃない?変遷理由の歴史
確かにEpipremnum aureum(エピプレムナム・アウレウム)に相当する植物がソロモン諸島で野生植物として採集されたことは、私の知る限り一度もない。
先ほど出てきた“ポトス・アウレア(Pothos aurea)”はのちに学名が変わり、現在は「Epipremnum aureum(エピプレムナム・アウレウム)」が正しい学名です。
「Epipremnum aureum」とは現在私たちが良く知っている“ポトス”の学名。
今回の論文を書いているアロイド(サトイモ科)研究者のピーター・C・ボイス氏によれば、
“ソロモン諸島には野生植物としてのポトスは無い”ということです。
“野生植物”というのは別の場所からやってきて野生化したという意味ではなく、元々からソロモン諸島に生えていた野生の植物かという意味です。
少し分かりにくいかもしれませんが、もしポトスがソロモン諸島原産の植物なら、現在も野生植物として存在しているはずです。
しかし、それが無いということは、ソロモン諸島はポトスの原産地ではなく、別の場所からやってきて帰化、野生化したのではないか?と推測されます。
しかし、最近モーレア島の自然林から採集されたナドーのEpipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)の標本を調べたところ、Epipremnum aureum(エピプレムナム・アウレウム)と同一であることが判明し、Epipremnum aureumの野生の起源が解明されました。
ナドーとは当時のフランスの医者であり植物学者のジャン・ナドーのことで、1880年~ポトス・アウレウスと呼ばれていた学名を1899年にEpipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)に変更した人です。
Epipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)=Epipremnum aureum(エピプレムナム・アウレウム)、現在私たちが良く知っている“ポトス”のことです。
“ポトス”の学名は歴史の中で何回も変遷します。
今回の論文を書いているアロイド(サトイモ科)研究者のピーター・C・ボイス氏によれば、
当時ナドーがモーレア島の自然林から採取したEpipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)という別の植物の標本を調べたら、なんと現在私たちが親しんでいるポトス(Epipremnum aureum)と同じものだったと判明しました。
つまり、ポトス(Epipremnum aureum)は元々、モーレア島に野生種として自然林に生えていたことがわかりました。
ソロモン諸島には野生種として生えていなかったけどモーレア島には野生種として存在していた。
しかもモーレア島にしかない“固有種”だったということまで分かっています。
だからポトス(Epipremnum aureum)の起源=本当の原産地はフランス領ポリネシア ソシエテ諸島のモーレア島であるという結論に至りました。
「ポトスの原産地=ソロモン諸島」という今までの常識が覆った瞬間です。
Epipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)の標本は斑入りではなく、19世紀に栽培導入された黄金色の斑入り種は園芸用に選抜育種された可能性が高いと思われます。このような選抜はクロトンやポリシャスなどでも一般的に行われていた。
ピーター・C・ボイス氏によれば、ナドーがモーレア島の自然林から採取したEpipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)の標本と、ポトス(Epipremnum aureum)は明らかに同一だと言っています。
しかし、Epipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)の標本には斑がありませんでした。
全面緑葉ということですね。
なので、19世紀に栽培されていた黄金色の斑入り種というのは、鑑賞価値を高めるためにEpipremnum mooreense(エピプレムナム・ムーレンセ)のうち偶発的に黄斑が出たものを、人間が繰り返し選抜して品種改良した園芸品種だろうと推測しています。
つまり、現在私たちが知っている鮮やかな黄斑の出るゴールデンポトスは、元々野生には存在しなかったということです。
ポトス(Epipremnum aureum)は枝変わりといって突然変異を起こしやすい植物として知られています。
19世紀には、ポトスだけでなくクロトンやポリシャスなど他の観葉植物でも選抜育種が行われていたようです。
当時からプラントハンターなど園芸をビジネスにしていた人達は、新規性、希少性など商品価値を高めるために品種改良など経営努力をしていたんですね。
まとめ
現在でもなお、ポトスの原産地はソロモン諸島とされています。
しかし、2004年イギリスのアロイド学者ピーター・ボイス氏によって、本当の原産地はフランス領ポリネシア ソシエテ諸島のモーレア島と判明しました。
なぜこのような誤解が生まれたのか?といえば、やはりポトスの繁殖力の強さが原因です。
南太平洋の小さな島から海を渡り、世界の熱帯・亜熱帯のほとんどに帰化し、野生化しています。
ポトスに関してはまだまだ興味深いことがたくさんあるので、ぜひ他の記事もご覧ください。